ヨーロッパ企画第27回公演『ボス・イン・ザ・スカイ』@青山円形劇場


四方を観客席に囲まれた、鉄パイプが塔のように組み合わされた高さのある舞台装置。初めて目にしたとき、ぞっとしてしまった。みんなこんな不安定なところでわらわらと動き回るのか…!時間が経てば不安なく観られるようになったけど、公演を重ねるごとに、しっかり高いところにいる体がしっかり作られてるんだろうね。酒井さんなんてそれは見事な動きだった。そりゃ諏訪さんも痩せなきゃと思うわ。


かつてもてはやされた、ドラゴン退治を生業とする「光の戦士」と、確かなムーヴメントが起きている「ロックフェス」。ファンタジー色が強く出ているのにも関わらず、日常の中に入ってきてる異界のものをすんなり受け入れられる。決して派手ではないけど、ひさびさの会話劇を楽しむ、とても好みの作品でした。
序盤は地味に進んでいって、正直不安になった。笑いの要素があといくつかあっても良かったんじゃないかなー。でも、西村さんが登場してくるあたりから、みんなのロックフェスへの秘めたる思いがポロポロ出始めた頃は、移りゆく会話のくだらなさが最高に愛おしかった!土佐さんのかわし方がたまんない。
クリスタルを奪取したと嘘をつくシーン、好きだ。あそこに混ざりたい。空気読めずにホビットとか言ってしまう彼を一緒にいじりたい。ああいう誰も損しない嘘をつくのが、割と好きだったりするのです。
あとね、ラストが凄く素敵だと思うの。ぼんやりとした青い光がいくつも見えた瞬間、オチなのにじわっと涙が出てきた。本当に大好きな終わり方。みんなの幸せを予感する最後。あの後マックでドラゴン倒して戻ってきてみんなでフェスったのだろうねー。ロコモコ食べたのだろうねー。あのフェスTシャツが欲しかった。


高低差を活かしたネタとしては、携帯電話を上から盗み見る・下から上へ伝言ゲーム・上から下への攻撃としてたべっこ動物をバラリ・上からぶら下がるヘッドフォンを下で聴く・下で食べてるラーメンのにおいが時間差で上までその存在を知らせる・リストバンドを下からひっぱる。
あと、西村さんが中川さんに買ってきたTシャツを渡すときに、2階の床に寝そべって手を伸ばして階下の中川さんに渡すっていう、どの位置のお客さんでも見られるような配慮がされてた。永野さんのお尻のポケットにフェスのチケットが入ってるっていうのを見せるために、お尻を客席に向けて舞台を一周したり。ここで見えた客からじわじわ笑いが起きるのを見て、全体に笑いが広がってくが見えて、おーってなった。かつてドラゴンにやられた傷を見せるときも、自然に体を一周回してたよね。


10人わらわらといても、誰を見ればいいんだっていうことにはならなかったのは、シーンごとに見るべき核がきちっとあったんだなあ。ひとりひとりの台詞を思い出してはしきりにニヤニヤしてしまって、相当好きなのかもしれないって今、急に思った。サウダージを観た後に感じた感覚と似てる。わー!


来月にはテレビ放送もあるので、是非多くの人に見てもらえるといい。映像で見るとまた印象が変わりそう。

ヨーロッパ企画第27回公演「ボス・イン・ザ・スカイ」
7/24(金)22:30〜24:45 NHK教育「劇場への招待」